倉庫業の未来を考えた人材活用・女性が活躍できる環境づくり – 阪南倉庫株式会社

倉庫業の未来を考えた人材活用・女性が活躍できる環境づくり

阪南倉庫株式会社
阪南倉庫株式会社
業種
(事業内容)
倉庫業
設立年月日1923年9月1日
資本金4,125万円
社員数310人※うち、女性169人
本社所在地堺市堺区
ホームページhttps://capsohn.co.jp

ダイバーシティ推進に取組む背景や歴史

1914年に堺で創業以来、クライアントの様々な商品(モノ)を当社で取り扱い、 事業を拡大してきました。そのような中、昭和後期には「これからは少子高齢化の社会となる。
商品は大量生産・大量消費時代が終焉し、多品種少量生産が主流となり、迅速な個人への運送が多くなるだろう」と予測し、 クライアントと協力しあいながら様々な顧客ニーズへの柔軟な対応に努めました。

阪南倉庫株式会社

今までの「ただモノを預かって、発送する」倉庫から脱却し、「流れる倉庫」「情報倉庫」へと進化させるべく、 「物流トータルコーディネート」を目指してシステム化・機械化が進んだ倉庫作りに取り組みはじめました。 物流にかかるコスト(運ぶ費用や場所代、作業費用など)の削減、モノの流れをスムーズにするための設計などを、 お客様目線・従業員目線・商品目線・未来目線で考え、もっと良い方法がないか?その問いを繰り返し、 そしてそれをクライアントへご提案することを現在まで繰り返し行い、現在に至ります。

そして、その取り組みと同時に、少子高齢化が進み、多様化・高度化するお客様や消費者のニーズに 応えるために伴う人材不足という大きな課題に立ち向かうため、今までの男性中心の会社ではなく、 女性にも十分に活躍してもらいたいという想いを持ち、多様な人材が活躍できる会社を作り上げていこうと 取り組みはじめました。

STEP
1990年

汐見第一流通センター開設とともに、女性が働きやすい環境づくりに着手

STEP
2018年

女性社員数が社員の半数以上に

STEP
2021年

女性社員が幹部へ昇格

STEP
2022年

女性活躍推進法に基づく行動計画公表

ダイバーシティ推進の具体的な取り組み内容

【施設と一体化した、女性が活躍できる環境づくり】

人手不足が今後の課題の一つだと予測した昭和後期に、 当社は他社よりもいち早く、女性の活躍できる環境づくりに着手しました。
1990年、現在の主力センターである汐見第一流通センターを設立するにあたり、 「物流トータルコーディネートをする倉庫」として、社内システム開発に注力し、 経験豊富な者しか従事できないような作業を極端に減らすよう設計しました。
また、入社間もない社員でも基本的な作業であれば、1週間程度で独力で遂行できるよう、 作業内容の改革に努めました。
その際、女性が作業することも十二分に想定して改革を進めました。

さらには、作業の正確性を求めるために、作業の中に機械的な手順を入れて、 手順のルール化とともに作業精度の向上を図りました。
なお、機械的な手順とは、ハンディタイプのバーコードスキャナを用いて、商品バーコードを読み取る行為をいいます。
また、荷物箱は自動搬送ライン(コンベア)で移動させ、女性が押したり引きずったりして、 ぎりぎり取り扱いできる最大20キロと決め、重量をオーバーしないよう クライアントに協力していただきました。 

このように女性が活躍できる環境を整えるとともに、 仕事着も、現在はユニセックスなデザインを採用し、男女年齢関係なく、 誰でも着心地のよい、作業しやすいものにしています。

【地域密着型および応募者目線を考えた採用手法】

正社員は新卒採用がほとんどで、募集は主に大阪府内の高校・大学と連携をし、学生のご紹介・ご推薦をいただいています。
パート採用では、新聞の折り込みチラシで主婦層の募集や、ネット媒体で若手を募集し、地域密着型の採用活動をしています。
また、採用プロセスについては、どのポジションでもまず現場を見学いただき、 そのうえで採用プロセスに進むかどうかをご本人にご判断いただいています。

すると、実際現場をみた上で応募されるため、社員の定着率が上がりました。
そして、採用活動をするにあたり、私たちは今までの倉庫のイメージを払拭するべく、2つの取り組みを行いました。

1)会社名の通称として「CAPSOHN(キャプソン)」を使用
募集にあたり、「倉庫」と記載すると、女性や若い世代の方たちにはどうしても従来の倉庫をイメージしてしまい、募集人数が多くありませんでした。
そのため、1990年汐見第一流通センター設立時から、物流オペレーティングシステムの名である「CAPSOHN」という通称を社内外で使用することとし、採用活動にも使用をはじめました。

2)ウェブサイトのリニューアル
2020年に、当社のビジョンを明確に示し、倉庫という仕事を多くの皆様に知ってもらうために当社ウェブサイトをリニューアルしました。社長ブログも定期的に更新し、倉庫の魅力や当社を十分に伝えるツールとなりました。 以上、2点の取り組みから、多くの女性や若い世代の方たちからたくさんの応募をいただくようになりました。

【資格取得サポート】

業務に有益な資格取得のサポートは、性別問わず、費用・訓練サポートなど全面的に社員に行っています。
一般的に、フォークリフトの資格は男性のイメージがありますが、当社では女性が取得することを推進し、現在、女性社員18人が資格を取得しており、女性の活躍の場を広げています。
今後は女性がフォークリフトの資格を持つことが当たり前となることを目指して、引き続きサポートしてまいります。

【従業員間のコミュニケーションの場の設置】

2020年、35歳以下の若手社員を中心に「倉庫業とはどんな仕事か」「阪南倉庫はどうあるべきか」などを社内外でヒアリングして考え、想いをまとめたvisionマップを全従業員に配布しました。
そこにはvision、mission、value、そしてキャリアイメージが記されており、性別年齢、部署等問わず、従業員が思いを一つにして職務に就けるよう明文化をして共有しました。
また、従業員親睦会組織があり、社員同士のコミュニケーションをとる場を会社主導で作っています。
コロナ禍の現在は中止していますが、日帰りバスツアー、運動会&BBQ、忘年会などを全従業員対象に毎年計画・実施しています。
毎月の社内報では、誕生日社員の紹介や新入社員紹介コーナーがあり、部署や性別・年齢等問わず、社員同士がお互いをよく知ることによって、社内のコミュニケ―ションを円滑にできるよう取り組んでいます。

ダイバーシティ推進取組みの成功・失敗談

女性管理者・有資格者の増加で活躍の場が拡大

現在、当社では正社員・パート含めて169人(全従業員数の54.5%)の女性の方が活躍しています。
新卒採用を通して、各高校・大学との関係性は年々深まっており、女性が活躍している会社であることを知っていただいているため、近年女性の推薦をいただく機会が増加しています。
その流れの中で、女性の幹部候補生や管理者、作業に必要な資格取得者を増やし続けることができています。
当社では男女の区別なく、採用活動を行っていますが、ここ5年では正社員採用の男女比はほぼ1:1 となっています。
男性社会と言われる倉庫業としては、非常に多くの女性が活躍しています。
また、女性社員の視点から、「商品から見た倉庫はどんな場所だろう?」という発想にたどり着き、「倉庫はホテルで、商品は宿泊いただくお客様」と捉え 、「地元に根差した安心安全のローカルホテルサービスをめざす」というコンセプトを見出しました。

【ライフスタイルの変化による女性社員の退職】

今まで多くの女性社員を雇用し、活躍いただいてきましたが、2008年~2010年頃は女性社員が不足する事態に陥りました。
理由としては、①結婚・出産を機に退職する方が増加 ②採用不振 この2点でした。
①に関しては、結婚・出産後も働き続けられるようにと、もちろん産休育休制度はありましたが、残念ながら当時は、会社の雰囲気が復帰に関して後ろ向きの状況であったので、退職する方がほとんどでした。
その教訓を生かして、産休育休制度をしっかりと社員が理解し、対象社員は育休後、時間や業務内容等を調整したうえで育休前のポジションに戻れるようにし、安心して会社に復帰していただけるような仕組みを構築しました。
現在では、結婚・出産を理由に退職する方はほとんどいません。

ダイバーシティ推進の取組における経営上の成果

女性を含めた、誰もが活躍できる環境づくりを要としてセンター倉庫を1990年に設立、 当時としては画期的なシステム化・機械化を行ったことによって、多くの企業様が当社へご見学に来られました。
当社をモデルに、物流センターを全国展開された企業様もおられ、多くの企業様とつながるきっかけとなりました。
現在も地元のつながりやクライアントから新規のクライアントのご紹介いただくことも多く、 今までの取り組みがこうして現在の事業や売上につながっていっています。
また、パートを含めた女性社員の採用が順調であること、資格取得などを通して女性社員の活躍の場が 広がっていることで、人材が安定し、事業も拡大し、売上も順調に伸びています。

「個性や多様性を大切にしよう」が、当社社長の口癖ですが、 様々な価値観や考えを持った個性的な社員が集まる職場だからこそ、新しい案が生まれたり、 笑顔の絶えない現場づくりに繋がっています。
また、性別・年齢等問わず、 すべての社員が様々な場面で活躍ができる環境が存在する、チャンスも均等に与えられるということを 共有することによって、一人ひとりが行動し、チャレンジしています。

【人事担当者の声】

様々な人材に活躍してもらうために

物流センターを運営する企業はたくさんありますが、その多くは女性のパートタイマーを中心に雇用していると伺います。
弊社も少なくはないですが、それ以上に正社員としての女性従業員を多く雇用しています。
パートタイマーから正社員に昇格した者も存在します。
何より、新卒者採用時には女性の応募も数多くいただくことができています。
男女、年齢問わず、多様な人材を適材適所で活躍していただける環境づくりに努力し、その魅力にお集りいただけているものと信じています。
当社では机上のみでの採用活動は行いません。
まずは職場をご覧いただき、その上で選考に進むかを判断していただいています。
入社後のギャップを無くすことで、活躍の場を広げられるように取り組んでいます。

【従業員の声】

2008年新卒で入社し、現在は幹部候補生(副主任)として、労務部で勤務しています。

当社では、普段では関わり合うことの無い他部署、他営業所の社員と誕生日会等の社内行事を通して関わる機会があり、 社員同士のコミュニケーションが円滑です。
また、新入社員時から仕事を任せてもらえ、 資格を取得する機会や勉強会を設けてもらえました。
他企業では、事務の仕事、現場の仕事と分かれていることが多いと思いますが、 当社では事務の仕事が終われば現場の仕事も行うし、現場の方も端末を使ったり、 また忙しい部署への応援に行ったりと、性別や年齢等関係なく、様々な社員同士の交流や経験ができるのが魅力のひとつです。