多様な人材の採用・働き方改革により、良い組織風土を醸成 – 進栄化工株式会社

多様な人材の採用・働き方改革により、良い組織風土を醸成

進栄化工株式会社
業種
(事業内容)
製造業
(印刷特殊加工(シール・ステッカー製造))
設立年月日1980年7月1日創業
(1984年7月1日会社設立)
資本金1,000万円
社員数39人 ※技能実習生3人含む 男性22人女性17人
本社所在地大阪市鶴見区
ホームページwww.shineikakoh.co.jp

ダイバーシティ推進に取組む背景や歴史

当社は多種多様な分野で活用するシールやステッカーの製造・販売を中心に事業展開しています。
1980年に創業し、42年経ちますが、その間様々な時代を乗り越えて経営してきました。
一番の転換期は、リーマンショック翌年の2009年に、私がアメリカ留学の後、仕入れ先である大手企業での勤務を経て、父が創業した当社に製造本部課長として入社した時です(のち、2013年社長就任)。
私は、その時の経営状況を見た際、「この会社はバブル時代で時が止まっている。
大手企業は常に変革や改革を続けて成長しているのに比べて、我々のような中小企業はぬるま湯で何の努力もしていない」と大変な危機感を感じました。

当時は、製品を大量に作り、不良品はどんどん捨て、納期遅れも当たり前、ラミネート加工製品があるにも関わらず、ごみや虫など異物が入る工場環境など、時代にそぐわないやり方をしており、厳しい経営状況でした。それを見て、私は社内の大改革を進めることを決意しました。手がけたのは、「生産性改革」と「人材戦略改革」です。

まずは、工場内の環境や業務内容見直しなど生産性改革を進めていきましたが、昔からのやり方を好む社員からは反発があり、当時全体の8割の社員が退職しました。そのため、「若手人材をじっくりと時間をかけて育成する」という人材戦略改革の下、ハローワークや近隣学校の力を借りて、2010年から毎年数名ずつ高校生の新卒採用を行い、3か月の研修期間を経て全部門を学んだ後に正式配属とするようにし、人材育成に力を入れました。しかし、なかなか人材が定着せず、3年後の定着率は約40%、実に半分近くが退職してしまう状況でした。

一体、どこに原因があるのかを突き止めるため、全従業員と面談を繰り返し、一人ひとりの従業員と向き合うことで、人間関係や人事制度、ワークライフバランスなど、様々な問題を自ら見つけ出し、それらを解決するべく働き方改革・ダイバーシティ推進に取り組むようになりました。

また、「社員には、色々な人々に出会って成長してほしい」という思いから、2019年からシニア人材、外国人材、障がい者と、多様な人材の採用を始めました。
中小企業として生き残るためにどのように会社を改革するか、やれることをやっていく、やり続ける精神によって、これからも多様な人材とともに会社を成長させていく取り組みを行っていきます。

進栄化工(株)のダイバーシティ推進のあゆみ

STEP
2010年

高校生の新卒採用を開始

STEP
2018年

女性社員の結婚・妊娠を機に、初めて育児休暇取得制度、短時間勤務制度を導入・活用

STEP
2019年

高齢者キャリア採用を開始

STEP
2021年

障がい者採用を開始(重度身体障がい者1人)

STEP
2022年

男性従業員が初めてパパ育休を1週間取得

ダイバーシティ推進の具体的な取り組み内容

【外国人技能実習生と通訳人材の採用】

外国人材を雇用する目的は3つありました。

一つ目は、社内の活性化です。異文化交流をすることによって、他国の文化や環境を知りながら、自国の状況や環境を再確認し、お互い一段と視野が広がり学びがあります。そして、外国人材の仕事に対する姿勢や勤勉な態度に触れることにより、日本人社員へ良い刺激となると思いました。
二つ目は、業務工程の改善です。
言葉で円滑にコミュニケーションができない相手に業務を教えるということは、とても難しいことです。
教える準備や作業工程・マニュアルの見直しをする必要があり、作業効率の改善と教える従業員のスキルアップにつながる効果が期待できました。
最後に三つ目は、将来の海外拠点開設計画のための準備です。
新型コロナウィルス感染症拡大で計画は中断していますが、経済成長が著しいベトナムに将来拠点を開設することを視野に入れ、ベトナム人を採用しました。

2020年、自らベトナムに赴き、3人のベトナム人技能実習生を採用しました。
そして、来日する実習生達がどうしたら安心して働けるか?を考え、一番は母国語を理解できる人材がそばにいること、心の支えとなる相談役が必要ではないかと考えました。
そこで、補佐するための通訳人材としてベトナム人留学生1人を同時期に新卒採用しました。
入社後1年間は、実習生と留学生に同業務に従事してもらい、お互い支え合いながら成長し、活躍してくれました。

また、外国人材を採用することによる目的・効果を社内で周知し、ベトナムがどういう国か、コミュニケーションに必要な簡単なベトナム語など、ベトナムに関する資料を全従業員に配布することによって、社内で理解を深めてもらいました。
外国人材の頑張りのおかげで、社内外での評価が高く、実習生はもうすぐ3年を迎えようとしています。
嬉しいことに、さらに2年延長して働きたいと申し出てくれる者も現れました。
今後も外国人材は技能実習生含め採用予定です。

【 柔軟な働き方の導入】

今まで多くの女性社員を採用し、活躍いただいてきましたが、残念なことに様々な理由で退職する女性社員が少なくなく、勤続10年以上の女性社員が一人もいませんでした。
そこで、結婚出産などのライフイベントに左右されることなく働き続けてもらうためにはどうしたらいいか、「仕事を続けたいと思うなら100%復帰してほしい」という思いの下、取り組みを始めました。
育児休暇取得制度、短時間勤務制度の導入にあたっては、厚生労働省の育児支援プランナーによる無料アドバイスや助成金を活用し、円滑に進めることができました。
そのおかげで、2018年、女性社員が育児休暇を初めて取得し、これまで2人が2回ずつ取得しています。
また、2022年に男性社員も初めてパパ育休を取得し、育児休暇に対する社内の理解・認知も広がりました。

また、出産、子育て、治療等の個r人の事情に合わせ、必要に応じて短時間勤務や残業制限などの制度を活用し、柔軟な働き方ができるよう環境整備をしていきました。
例えば、夫婦で当社に勤めている社員で切迫早産のリスクがあり、電車や自転車での通勤が難しく、産休前に休職せざるを得ないかどうか相談された事例がありました。
その際、男性社員の残業を3か月免除し、夫婦で共に定時で出社退社をし、自家用車で一緒に通勤するという解決策を講じました。
周囲の従業員の理解とフォローもあり、無事その状況を乗り切ることができました。

他には、新型コロナウィルス感染症拡大後、保育所に子どもを預かってもらえない機会も増加し、そうした時に従業員が子連れ出勤することをOKにしました。
デスク横に子どもの居場所をつくり、ベビーカーもオフィス内に常備し、みんなが協力し合い、面倒を見ています。
クライアントもその旨を周知しており、来社される際は微笑ましく見守っていただいております。
女性社員には、家庭を持ちながら会社でも自分が望まれる環境を作り、仕事と家庭の両立と共にモチベーションアップとエンゲージメントの向上につなげられるように努めています。

【 コミュニケーションの場を提供、福利厚生を充実】

大改革を進める中、様々なバックグラウンドの社員が増加し、離職の原因に人間関係によるものが多い時期がありました。
また、職場が工場と本社に分かれており、社員全体のコミュニケーション不足を感じていました。
そこで、個々人が互いを認め、尊重し合える風土を醸成し、業務効率アップにつながるよう、お互いを知る機会を会社として設けることとしました。

具体的には、コロナ禍の現在は中止していますが、毎年年末に全従業員とトーナメント制卓球大会を開催しています。
産休中の社員も参加し、豪華賞品を賭けて真剣勝負が繰り広げられます。
そこでは、業務中には見られない社員達の一面が見られ、個々人を知る良い機会になっています。
また、昼食は全従業員にお弁当を無料配布、社員食堂にて毎日食事を共に、他部署の社員同士も交流できるようにしています。

【 年功序列から能力主義へ】

高校新卒者はどうしても手取り給与が少なく、残業をして手取りを増やそうとし、結果的に疲労が蓄積してパフォーマンスがあがらないという、負のスパイラルに陥っていた時代がありました。そこで、年功序列をやめ、性別・年齢・国籍等を問わず、誰でも成果を上げれば評価し、昇給・昇格を行う能力主義の人事評価制度に変更し、無駄な残業を削減しました。また、業務に必要な資格取得にあたり、費用を会社でサポートし、取得した社員には資格手当を支給しています。

業務改善提案による表彰制度も作り、社員からどんどん良い意見を引き出しています。
そして、全従業員との個別面談を通じて、一人ひとりの将来のビジョンや課題、会社に対する意見をヒアリングし、会社として考えるキャリアプランや期待を伝えることによって、モチベーションアップに努めています。
結果、入社4年目の若手女子社員3人を主任職へ登用し、やりがいと責任を持たせると同時に報酬アップを実現し、現在、女性活躍のロールモデルとして育成しています。

ダイバーシティ推進取組みの成功・失敗談

多様な価値観を持つ人材と働くことが会社の成長につながると実感

私のアメリカ留学経験から、多様性がもたらす効果、企業にとってのメリットを感じて取り組み始めた多様な人材の採用ですが、様々な価値観を持つ人材と一緒に働くことによって、従業員一人ひとりだけでなく、会社として非常に成長していることを感じています。

異なるバックグラウンドを持つ人材を受け入れることで、互いに刺激を受け、学び合い、平等に様々な人材を職場に受け入れる風土が醸成できました。
無意識な偏見を取り除き、互いにリスペクトしあえる関係を社員同士で築いています。
また、同僚が必死に頑張っている姿を見て、自分も負けずに頑張ろうという気持ちが芽生え、活力のある職場を作り上げることができました。
それにより、会社への愛着や信頼が高まり、社員のエンゲージメントが向上し、新規事業の展開や、離職率の低下につながりました。

これは、全従業員共通の課題ですが、特に障がい者ならびに外国人材については、職場定着において更なるフォローが必要不可欠だと感じています。

【障がい者】

2021年、重度身体障がい者を高校新卒で採用し、主に営業事務を担当してもらいました。
また、本人がパラアスリートでしたので、仕事との両立を支援し、試合や練習に合わせて休暇取得を許可し、社員一丸となって応援していました。
しかし、残念ながら本人都合により、入社1年半で退職しました。
本人の適性に応じた適切な業務配分や、社内の理解とハード面・ソフト面双方の万全な受け入れ態勢、パラスポーツとの両立を支援する入念な準備が必要だったと考えています。
また、初めての社会人経験であったため、業務に対するモチベーションの維持についても課題が残りました。
しかし、この採用を通じて社員が学んだことは多くあり、今後も障がい者雇用を積極的にしていく予定です。

【留学生】

2020年に技能実習生の補佐役として入社したベトナム人留学生が、入社3年目で退職しました。1年目は技能実習生と一緒に工場で作業と通訳を行い、2年目からは営業補佐として受発注業務を任せ、これから当社初の女性営業職となる予定でしたが、学生時代に修得した学問を活かし、日本で仕事に従事したいという夢を叶えるため、転職しました。
外国人材は、基本的にはいずれ母国に帰るという選択に迫られます。
本人のライフプランなどを可能な限り共有して、夢を実現させるための応援と、業務引き継ぎのバランスを常日頃から考えておく必要があると考えています。

ダイバーシティ推進の取組における経営上の成果

間接的効果

職場内の効果

多様な人材を採用することによって、他人を認め、偏見を排除して受け入れる意識改革ができました。
そして、性別、国籍、年齢に捉われない風土が醸成されました。

外的評価の向上

現在、当社は大阪府「男女いきいきプラス認証事業者」および大阪市「女性活躍リーディングカンパニー」の認証を取得しています。
第三者に取り組みを評価されることで、社会的信用や企業価値が向上し、優秀な人材の獲得ができるようになりました。
また、社員にも取り組みを認知してもらい、自分の働いている会社が世間でどのように評価されているのかを改めて知ってもらう機会となりました。

直接的効果

プロセスイノベーション

様々な取り組みから、優秀人材が定着し、女性社員も勤続10年以上の社員がでてきました。
また、他者への波及効果により、個々人のスキルアップで生産性が向上しました。
少数精鋭で業務改革が実現でき、直近2期連続で増収増益を果たしています。
今後も中小企業としての課題を改革と共に乗り越え、成長していきます。

高齢者キャリア人材が今までの経験を活かし、新商品の開発、新規クライアント開拓を進めています。
事業・売上を拡大するべく、これからも多様な人材の新しい視点で新規事業を生み出し、展開していきます。

企業の使命とは何か

SDGsの推進を2019年からスタートしましたが、リサイクルやゴミ削減、省エネよる環境への配慮だけではなく、ジェンダー平等や人や国の不平等を無くすための活動を、身近な所から行うことが企業としての真の使命と認識しています。
また、ダイバーシティの推進については、まだ緒に就いたばかりで、成果を上げていくのはこれからですが、多様性が間違いなく組織を強くし、中小企業が生き残るためには必須となる条件と確信しています。
今後も様々な取組みにトライアンドエラーを繰り返しながら、一歩ずつ進化させ成長を図り、地元大阪の、そして日本経済の発展に少しでも貢献できればと願っています。

入社9年目 瀬戸愛弓(あゆみ)さん

2014年に入社し、社歴4年目で主任に昇格、現在は本社業務課で主に受発注を担当しています。

入社のきっかけは、当社の社訓「情は人を動かし、企業の顔を作ります」に共感したからです。

社訓通り、当社は社員のコミュニケーションが活発で、風通しの良い職場です。
私は今まで育児休暇を2回取得しました。
家庭の事情で急な休みや早退もある中で、職場メンバーに協力をしてもらって家庭と仕事を両立できています。
また、当社は子どもをオフィスに連れて出勤することができ、連れてきたときは嫌がられることなく誰かが面倒をみてくれるアットホームな会社です。
今まで様々な問題や課題を社長に直接相談し、一緒に解決してきました。
今後は、後輩社員の模範となれるよう、業務もプライベートも取り組んでまいります。